エクスプローラープロダクト
プロトタイプとか、コンセプトモデルとか、フラッグシップモデルとか、プロダクトを作るときに、ちょっと実験的な作りかたをすることってありますよね。
私はこういうプロダクトの作りかたが大好きで、会社にいたときも、プライベートプロジェクトでも、個人になって妻とサイト運営している今も、そういう感じのことばかりしています。
で、やっていて思ったんですけど、本来やりたい(やっていて楽しい)部分を言葉にすると、プロトタイプも、コンセプトモデルも、フラッグシップモデルもなんか違うんですよね。
プロトタイプ = ある仮説を検証するための機能
コンセプトモデル = 特定の概念を再現したモデル
フラッグシップモデル = 特定のジャンルの先端層に刺さるモデル
プロトタイプは仮説検証。
コンセプトモデルは概念再現。
フラッグシップは先端型。
これらはすべて実験的ではあるんですけど、成果の先がある程度、具体的になっています。
大まかにいえば、どれも「再現や検証」を目的にした作りかた。
落としどころがあるんですよね。
リサーチによる全体感があって、それをもとに具体化した仮の成果イメージがあって、ユーザーに「どう?いい?悪い?」と聞く。そんなスタイルの作りかたに感じます。でもやってて楽しい実験的なプロダクト作りって、もっと直情的で「模索」に近い作りかたなんですよ。
成果を想定してないっていうか、答えがないっていうか、モヤモヤしながら「何してんだろ」ってくらいのことがらからカタチにしていく。むしろなんかカタチを出して仮説・検証サイクルでも見つけられたらラッキーみたいな。
自分で言ってて超ムダが多そうですね。
でも、そんなモヤモヤなつくりかたをすることって、現場では多いような気がします。
そういうの「エクスプローラー」なプロダクトっていうのが言葉としてふさわしい気がしました。
くっつけてしまえば「エクスプローラープロダクト(造語)」。
エクスプローラーって言っても、何かを探す(=エクスプローラー)ためのものではないです。検索機能じゃない。
探すのは、製品が世に出ることによって起こる変化の可能性。
これをセンシング?ダウンジング?する感じ。
エクスプローラープロダクトの考え方が役に立つのは、例えば、サービスの新しい方向性を模索するとき。
具体的な仮説もコンセプトなく、フラッグシップのようにユーザー層がわかるわけでもない。
だけど、既存プロダクトがこのままだと落ち目に入る予感。そんなとき、「新規なプロダクトをー!」とか経営者が叫んでも、なかなか簡単には新規なものって出てこないんですよね。資本のある大きな企業でもそうです。
で、そういうときって、多くの場合、オチはこうなるんです。
- 新規性はないけど安パイなパフォーマンスのプロダクトをどっかからマネる
- 作り手個人の独創性みたいなものにアイデアを依存させて開発し成功(失敗)する
前者は、そもそも新規性ない。
後者は個人に頼りすぎていて超不安定。
「新しい可能性を模索する」という目的に立っているのに、あんま模索してないから、得るものも少ないですしね(後者の場合、作り手本人は得るものが多いのだろうけども)。
エクスプローラー的にものを作るというのは、可能性の模索を主にプロダクトを回してみることです。
- 特定の機能がユーザーにどう影響するのか
- 自分たちにフィットしたサービスプロダクトはどんなものか
- 自分たちがパッと作れたものにどんなユーザーが集まるか
- このプロダクトをどのようにアップデートしたくなるか
エクスプローラープロダクトは、リサーチと逆方向のプロセスで開発アプローチしてます。
リサーチが、
ユーザー → プロダクト → 自分たち
or
マーケット → プロダクト → 自分たち
と、情報を自分たちに寄せていくのに対し、エクスプローラープロダクトは、
自分たち → プロダクト → ユーザー
or
自分たち → プロダクト → マーケット
と、自分たちの今もっている何かをプロダクトに当ててカタチにし、ユーザーやマーケットに問うていく。
「正解はなんだろう?」という発想ではなく、「これやったら何が得られるだろう?」の発想でものを作るのです。
頭がアレコレ考えなくて済む。
とっかかりが早い。
より模索的。
エクスプローラープロダクトを作りだすと、結局、やることはコンセプトモデルだし、プロトタイピングだし、場合によっちゃフラッグシップを作ったりもするんですけど、具体的な成果の得られる「検証」を第一の目的にせず、柔軟に、「あぁこういうやり方も面白いかも」、「こういうのもユーザー課題なのかも」などと枝葉を分かれさせるように、中の人々の頭を刺激するのを目的とするところでは意味合いが違ってきます。
エクスプローラープロダクトが売り上げ成果を出さずとも、周囲のメンバーが頭の中に可能性を増やせれば、新規性の名の下にサービスゴールが思いつく確率は上がるし、新規性のあるサービスゴールが生まれれば、それはもうほとんど新規性のあるプロダクトを思いつけたに近いです。
もちろん、「期間内の成果」に目を向ければ効率は悪いです。
エクスプローラーな取り組みは、意地悪にいえば「自分探し」みたいなモノづくり方法。可能性ばかりふくらんで、プロダクトの洗練やサービスの明確化に目を向けないことになりがちです。
利益追求をする組織では、余裕のある期間に、成果を問わず作ってみるような類のものごとになるでしょう。
しかしながら、考えてみればプロダクト開発も結局、人がやっていること。
「自分探し」をしなかったものは、周囲ばっかり見て駆け引きしている軽い存在になるのは目に見えています。
特にウェブや、ソフトウェア系のプロダクトにおいて、自分のことをわかろうとも試みなかった人間が作るものは、時代性には目がいくものの、売り上げ主義的だったり、教科書的だったりして、結局、主体であるユーザー、つまり「人間」に馴染まなずに消えていくことも多いです。
まぁビジネスだけで考えたり、短期間だけで考えれば、そういうものでも十分に評価できるので、一概に「自分探ししろ」とは言う気にはならないです。
実際の開発においてはリサーチ入れて、プロトタイプから始めて、PDCA回してプロダクトの制度を上げていくプロセスもとても大切。ケースバイケースで良いと思います。
とりあえず言えることは、「エクスプローラープロダクト」が好きな私は「自分探し」が好きな人間だと言っているようなもんなんじゃないかと気づきました。
完全に自分で自分の首をしめている気がするので弁解しておきます。
私は自分探し好きではなく、ただの自分好きです。
そこのところだけはお間違いのないように願いたい。